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第1回地域材利用建築物の建設促進に向けたセミナー

 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が10月1日施行されるのを前に、同法の理解を深め、県内での産業活性化につなげようとする研修の第1回セミナーが28日、郡山市の県農業総合センターで開かれた。主催はふくしまの家地域活性化推進協議会。全3回で今回は、木造化が可能な公共建築物の大部分を占める学校建築がテーマとなった。
 建築、木材関係者をはじめ、県や市町村の教育委員会、建設関係部局の関心も高く多数が参加した。
 三春、会津若松、棚倉、塙、磐梯、西会津、飯舘、新地など県内十数カ所の学校建築に携わった長澤悟東洋大学理工学部建築学科教授が「学校建築への県産木材利用のポイント」について講演した。
 学校建築は戦争により3556校930万平方メートルが消失。早急な復興が求められたが、セメントも鉄もない中、木だけが潤沢にあったため木造2階建ての事務所や役所が方々で建設された。しかしこれらは「仮設」に過ぎず、いつかはRC造による建築物にしようという意識があったという。
 さらに30年代に学校建築の建て替えが盛んになる一方で、戦火の記憶と伊勢湾台風など大災害が頻発したことから日本建築学会は防災面を重視。「木造建築の禁止」を盛り込んだ「防災に関する4項目」が500人の出席者満場一致により決議。補助制度も拍車をかけ、学校建築の非木造化が加速したが、他への影響も大きく山間部の施設や神社仏閣さえRC造で作られたという。木造技術者はいなくなり、日本での木構造研究は20年遅れていく。
 学校での使用がなくなったことで、いわゆる川上と川下をつなぐリングが外れ、住宅建築のみに残され現代につながっている―と解説した。
 しかし、昭和50年代になると同学会に在来構法研究懇談会ができるなど木造復権の兆しが現れ、社会的要請もあって補助率もRC造並みに改められ、木質化・木造化への流れとつながっていく。
 学校建築には、木材の乾燥の期間を含む事業スケジュールや材料、構造など特有の課題を挙げ、特にコストについては、子供たちが触れる部分のみ木造とするなどの混構造も視野に入れるなどの工夫により「RC造よりも安くなければ意味がない」と主張。栃木県茂木町や長野県川上町などの事例を挙げた。
 「木は他の公共施設にはない力を持つ。学校建築は子供のためならばとみなが関心を持つ。これを生かし地域が持つ力を把握して、その地域ならではの可能な施策は何かを見つけ出して、そこから木の学校を作り出すやり方であるべき」と締めくくった。尾形博史林野庁木材利用課需要開発係長は、同法のあらましを説明した。

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                                 視点(公共建築物木材利用促進法)より
  昭和30年代半ばから続いてきた公的施設の非木造化(不燃化)政策を大転換する「公共建築物木材利用促進法」がきょう1日に施行される。「林業の健全な発展」「森林の整備」「木材自給率の向上」を目指すもので農水、国交両大臣が定める基本方針も4日に公表される。
 同法の目玉は、国内の公共建築物を可能な限り木造化・木質化するというもので、まず国が率先して省庁所管の低層建築物を原則すべて木造化する。さらに低層、高層にかかわらず内装などの木質化、備品・消耗品に木材活用、木質バイオマスの利用を促進する。
 わが国で1年間に造られる公共建築物のうち低層のものは約4割(20年度約600万平方▲メ)。その低層公共建築物の中で木造は17%にとどまる。公共建築物全体に占める木造率はわずかに7・5%に過ぎない。
 公共建築物がこれほど極端に木材利用を避けてきたのは、戦後災害に強いまちづくりに向けた耐火・耐震性の社会的要請や戦後復興期に大量伐採で森林資源が枯渇し、国土保全上の問題への懸念などから国や地方公共団体が率先して不燃化を進めたためだ。
 国の基本方針では、公共建築物における木材利用促進が「林業再生」「森林の適正な整備」「地球温暖化防止」に貢献するとして都道府県や市町村、そして民間にも波及させるためのさまざまな施策を講じるとしており、関係省庁間に連絡会議を設置して一層の具体化を図る方針だ。
 県建築指導課が県内市町村を対象に行った学校施設の木造化・木質化に関する意識調査によると、学校の木造化については「今後展開される国・県の施策によっては対応したい」が52%、「対応については今後検討する」の39%と合わせると91%の市町村が国に準じる可能性を示唆している。
 本県が林業県であることも鑑みて、公共建築物の木造化に転換する国の方針は歓迎したい。ただ転換期には混乱も予想される。木材製造業の大臣認定制度が地域の中小業者の淘汰に至ってはならないし、林業界に県内の大工・工務店を含めた建築業界全体の活性化につなげる方策も忘れてはならない。岩手県紫波町、大分県中津市、栃木県茂木町などモデルはたくさんある。
 そのためにも、国と並行して県も部局横断の組織づくりを急ぎ積極対応すべきだ。市町村長、議会議員の理解も不可欠になる。

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