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22年度ふくしまの棟梁コンクール

平成23年1月31日「ふくしまの棟梁賞」の表彰式の様子を掲載しました。
−講演内容−
 県は1月31日、福島市の杉妻会館で、22年度ふくしまの棟梁コンクール表彰式・記念講演会を開いた。国土交通省の大工育成塾講師や、職人が作る木の家ネットの発起人も努めた松井郁夫氏(松井郁夫建築設計事務所主宰)が「むかしといまをみらいにつなぐ」と題して話した。
 松井氏の専攻は工業デザインだが、育ったふるさとの古い都市や街並みが壊されていくのをみて、建築の方に携わってきたという。井戸があるような町屋に育ち、その知恵を今に伝え未来に形作ることで、より豊かな生活が築けるとした。
 国産材を使うことが叫ばれているが現状は、植林費用がなく山が荒れ果てている上に、プレカット普及により大工技術が伝えられない、木造の価格が不明、在来工法の強度の解析―など課題を挙げた。海外の人々が日本の古い建物を買い、外国に建てている現状から「なぜ日本人は宝石を捨てて砂を拾うのか」と、かつての美しい街並みは美の指針がこれまでなく、棟梁の規律正しい、構造的、機能的な美しさを持った技術が伝えられていないとした。
 日本の家は30年程度といわれるが、そもそも木組みの技術は長寿命のもの。そして「木組みの家を建てることで地域のコミュニティを再生すること」が目的であり、その理念は1.丈夫で長持ちする長寿命の家づくり2.生活の変化に対応できる架構体3.日本の気候風土に根ざす4.川上から川下までを視野に5.循環社会を支える天然素材6.伝統と新技術の融合7.各地の実践者との連携8歴史文化をつくるまちなみづくり―の8点にあるとし、その背景を説明した。
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−棟梁表彰式−
22年度ふくしまの棟梁コンクール「ふくしまの棟梁賞」の表彰式が31日、福島市の杉妻会館で開かれ、3職種4人に知事名で表彰状が贈られた。
 木造建築の施工に携わる技能者として卓越し、特に後進の指導・育成に力を注いでいる棟梁・親方を表彰する制度。今回で17回目、75人が受賞した。
 建築関係各団体や商工団体から4人が推薦を受け応募。昨年12月の書類審査、代表作品の現地審査を経て全員が受賞した。審査は牧田和久氏(会津大学短期大学部長)を委員長に濱田幸雄氏(日本大学工学部建築学科教授)、番場恵子氏(番場1級建築士事務所)、八島信夫氏(福島建設工業新聞社取締役会長)、瀬谷善壽氏(県建築大工業協会相談役)が当たった。
 佐々木孝男県土木部建築担当次長が推薦内容、経験年数、後継者育成、地域貢献、代表作品の材料の吟味といった審査の観点など審査経過を報告。牧田審査委員長が講評を述べ、小柳秀一県土木部技監が「地域に根ざし優れた伝統的技術と後継者育成に努められた。地域の木材などをふんだんに使い特色ある地域づくりに貢献し、地域経済の活性化、ぬくもりある地域社会の形成に大きな役割を果たした」と述べ、受賞者に一人ひとりに表彰状が贈られた。
−表彰状を受ける受賞者−
左官部門で受賞した高橋 勝さん(会津若松市)
−総評−
今回の受賞者の特徴は、匠の技術を駆使して伝統を守り伝承していく土蔵修復・本堂の新築がある一方、伝統を守り継承する中で、その伝統工法を生かし応用している一般住宅もあり、双方の意欲ある姿勢が顕著に見られたことである。
 建築大工においては、それぞれが施主あるいは地域との対話を大切にしながら、素材の特性を熟知した上で、棟梁ならではの社寺建築の技法を随所にちりばめていた。
左官においては、伝統工法や新素材の良さを取り入れた創意工夫で、美観に優れた地域に溶け込む景観を作っていた。
 また、社会情勢の変化に伴い後継者育成や技術の伝承が難しくなっている中、両部門の親方が現場での実作業を通じて後世に伝統技術を伝承していく姿が印象に残る審査となった。最後に、このコンクールによる表彰が、伝統技術の技を通して本県の気候、風土に合う木造建築物の建設推進に貢献することを期待して講評とする。
−個別評−
◆建築大工
新井田富英氏(柳津町・新井田工務店)現地審査対象=本堂(湯川村)62年にわたり建築大工として活躍。2級技能士、2級土木施工管理技士、職業訓練指導員、2級建築士の資格を取得。柳津町商工会理事、柳津町建築業組合長、建築士会の理事等を歴任し地域産業の発展に多大に貢献している。後継者育成のために大変な努力をしており、1級建築士等の資格を取得させた実績もある。
 審査の対象建物である本堂は、社寺建築の伝統を守りながら研鎖を積んでおり、向拝(ごはい)升組(ますぐみ)造りとしている。垂木が化粧2重仕上げで美しく、特に内部の折上天井は手間をかけ丁寧に仕上げている。
◆宮大工
石川吉登氏(郡山市・石建工匠)、現地審査対象=住宅(郡山市)45年にわたり宮大工として活躍。1級技能士、職業訓練指導員、2級建築士の資格を取得し、刻みの力の研究に取り組んでいる。また、社寺建築の伝統の伝承や後継者育成にも取り組んでおり、県建築大工業協会理事としても活躍している。
 審査の対象建物である住宅は、社寺建築の技法を駆使し、全国各地から、収集された名木を生かした数寄屋現代和風建築であり、匠の技術が随所に見られる。
◆左官
日下部久雄氏(郡山市・日下部左官工業所)現地審査対象=土蔵修復(郡山市)47年にわたり左官工として活躍し1級技能士、職業訓練指導員、2級建築士の資格を取得。見習生技能者が全国大会で優勝するなど実績ある後継者育成に取り組んでいる。また、郡山地区左官組合・県左官組合連合会の理事としても活躍している。
審査の対象建物である土蔵修復した蔵は、大鉢巻の鰻(こて)絵、広小舞(ひろこまい)、軒天(のきてん)、袖壁の亀甲など細緻にこだわりをもって熱心に取り組んでいる。特に土蔵の化粧を随所に施し、白黒のコントラストが美しく丁寧な仕上げである。
◆同
高橋勝氏(会津若松市・高橋左官工業)現地審査対象=住宅(会津若松市)50年にわたり左官工として活躍し1級技能士、職業訓練指導員、2級施工管理技士の資格を取得。左官業の後継者と組合発展のため、多大な貢献をしている。また、県左官業組合連合会副会長、会津地区左官業組合長としても活躍している。
 審査の対象建物である住宅は、技術向上の取り組みの中で、外装仕上げにイタリア製のスタッコラーストという新素材を使用。品質を重視した施工で目地のないシンプルな仕上げが、手作業ならではのぬくもり、温かさを感じさせる。

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