ふくしまの家地域活性化推進協議会は11月12日、「地域材用建築物の建設促進に向けたセミナー」の2回目として、栃木県茂木中学校の現地調査を実施しました。
※説明する古口町長(上)
ふくしまの家地域活性化推進協議会は11月12日、「地域材用建築物の建設促進に向けたセミナー」の2回目として、栃木県の茂木中学校を視察した。設計・施工・木材関係者、学校建築を控えた二本松、伊達、矢吹、三春、楢葉、葛尾など市町村から30人が参加した。10月1日に施行した公共建築物木材利用促進法を踏まえ、県内での産業活性化につなげようと全3回で計画している。視察した同中学校は、林野庁がまとめた「こうやって作る木の学校〜木材利用の進め方のポイント、工夫事例」にも選定。今年の栃木県マロニエ建築景観賞、21年全建賞を受賞しており、全国から視察が殺到している。
茂木町は、栃木県南東部、人口約1万5000人の過疎町で総面積の3分の2が山林。大正時代から合併前の旧逆川村で全戸出役により150ヘクタールもの村有林にスギ、ヒノキ65万本を植林し続けた背景がある。古口達也町長が町有林を長老たちと歩き、ふと「今後、この木はどうなってしまうのか」と尋ねたことが、この計画の始まりという。
町の歴史を引き継ぎ、木の持つさまざまな効用享受と林業活性化を企図し「町有林を活用した町の歴史と町民の心に残る学び舎づくり」をコンセプトに林業センター、森林組合、有識者、宇都宮大学、林業従事者の連携はもちろん、できるだけ多くの町民も建設に携わること、調達から学校建設の過程を児童生徒の郊外学習の場とした。
W造はRC造と比較して1割高いと言われるが、このコストを安くすることも命題の一つ。作り付けの基礎工事、木製建具も含め平米単価約23万円で仕上げるため「すべてをシンプル」にし、メリハリを付けた課題を最初に設定した。設計事務所案で納得いかない部分は職員がチェックし、時間給に直し設計費から相殺したという。
コストに加え懸案となるのが木材の乾燥にかかる時間。建設決定直後、基本設計完了2カ月前の18年1月に木を切り出し、町有地で自然乾燥させ、19年3月には木材を施工者に引き渡している。この伐採、ストック、運搬、製材まで地元森林組合が行うことで地元の製材所、大工など関係者がかかわった。法令のため校舎棟、管理棟は木造とRC造の混構造だが町有林4800本1580立方メートルに、地域材も含めて使い「見えるところはすべて町有林」とした。校舎、体育館建設、既存解体、外構含め約16億円で半分は文科省の安全安心な学校づくり交付金による。
学校を案内した町長は「木から教えられることは多い。お題目だけでは木材の利用率も高くならない。国の覚悟と民間の利用が必要で、林業振興というなら木を使った建物や山にそれなりの保証が必要。あすにも農業や林業をやめるという時勢に、都会の審議会で長期的な視野など悠長に話している場合か」と語気を強め、建設に携わった小崎正浩生涯学習課課長補佐兼施設係長は「他の中学校も木質化を図っており来年以降、小学校にも行いたい」と話している。
※井桁構造が見える多目的スペース(右上)
▽管理棟・普通教室棟・特別教室棟=W造一部RC造2階建て▽屋内体育館=SRC造平屋▽ほかに渡り廊下・屋外倉庫など▽総延べ床面積5842平方メートル▽設計=楠山設計▽施工=東洋建設(16億5427万円)