第6回耐震化リフォーム(震災復興)セミナー〜ふくしまの建築文化を未来につなぐシンポジウム〜
県、県建築士事務所協会建築復興支援センター、県耐震化・リフォーム等推進協議会は、福島市の杉妻会館で震災復興セミナー「ふくしまの建築文化を未来につなぐシンポジウム」を開催いたしました。
今、歴史的建造物を遺す意義は何か?
建築関係者、行政、一般など約100人が参加いたしました。
時野谷茂会津大学短期大学部産業情報学科長・教授をコーディネーターに、旧ノートルダム修道院(福島市)の設計者ヤン・ユヘルカ駐日チェコ共和国大使館副大使とペトル・ホリーチェコセンター所長、同施設について造詣の深い紺野滋氏(あら!福島の会代表、福島民友新聞社論説委員)、鈴木勇人氏(県建築士事務所協会理事、同協会青年部会員)が意見を交換し、降幡氏もオブザーバー参加しました。
日本の演劇にあこがれて来日したというホリー氏は、今回の修道院解体の報に接し保存を訴えました。
紺野氏は、主に宗教建築物を残そうという運動のため2年前に「あら!ふくしまの会」を結成し、当時の修道院の周囲など貴重な資料を示しながらノートルダムの内部や、今回震災で解体されたヴォーリズ設計の福島教会、聖ステパノ教会なども解説しました。
鈴木氏は同協会青年部が作成した古民家マップを示し、鯖湖湯、旧日本計器検定福島試験所、現写真美術館を紹介しました。
また、県内最古の土蔵を擁する伝統建築物である飯坂の旧堀切邸再現において、8棟は解体したが元の材料を再利用し本質的な価値を示している事や堀切邸の近くにある「なかむらや旅館」において、被災後の調査での3階を諦めるよう説得したがおかみさんが「なんとしても残したい」と譲らず、その熱意に後押しされたエピソードを話しました。
一方、震災直後の福島教会が駆け付けた時は既に応急危険度判定で赤紙が貼られ、行政から情報により解体へと進んだ事による専門家の言葉の重みを語りました。
降幡氏も建築物の持ち主が現在の発想で結論を出すのは問題で経済的側面からも目の前のことしか考えられない状況を設計者は側にいて価値を伝え寄り添い、ともに残すための方策について尽力すべきと話しました。
紺野氏は古いものを残すことが自分たちの足下を見つめることにつながると歴史的背景からの保存アプローチを提示し、保存運動側と所有者の認識が一致しないと難しいと課題を示しました。
鈴木氏も、福島に点在する文化財級の建物を残すためには、保存と利活用が不可欠とし、1.建築家の寄り添い2.行政の親身な対応と情熱3.財団など専門機関の設立4.資金の調達方法を提案しました。
歴史あるものには力がある/降幡氏が講演
長野県松本市を中心に全国の民家再生を手がける降幡廣信氏(降幡建築設計事務所)が基調講演。降幡氏は「歴史を背負ったものには力があり人を引き付ける魅力がある。人生を語るに等しいような、昔日を思い起こし、心を向ける物語がある」と歴史的建造物の意義を話した。
また「民家は地方の証明書。地方ごとに姿形が異なるものが作られており、これを生かし観光に役立てるべき」「手は心と直結しており、大工の心は手に現れる。これが住む人も訪れる人もどんなに喜ばせるか。誠心誠意の施工に尽きる」とした。「現在の住宅は伝統のものではないが、われわれはこれを作ることが使命で、それは日本人の心を豊かにする。過去のものをそのままではなく、現代風に再生しそれが和風新築の芽を育てることになる」と結んだ。